IFRS財務諸表の分析

1.IFRS・日本基準のどちらの財務諸表かの見分け方

 IFRSは一部の上場企業について適用されています。しかし、有価証券報告書で財務諸表を分析する際にこれがどの会計基準で作られているかを確認するには慣れが必要です。もちろん、丁寧に有価証券報告書を読み進めると、IFRSや国際会計基準という記載があるため、これによって判別可能ですが、ここでは確実な判別方法を紹介します。

【経理の状況】を読む

 有価証券報告書の【経理の状況】に記載されている連結財務諸表及び財務諸表の作成方法を読むと分かります。以下では特定の企業を挙げて記載していますが、基本的に同じ会計基準を適用していれば記載内容は同一です。

IFRSを適用している場合

以下は、楽天株式会社の有価証券報告書 第5【経理の状況】 1連結財務諸表及び財務諸表の作成方法 の1文です。


当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下、連結財務諸表規則)第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、第93条の規定により、国際会計基準(以下、IFRS)に準拠して作成しています。


出典:楽天株式会社第24期有価証券報告書

上記のように国際会計基準(IFRS)に準拠したという記載があります。これでIFRSを適用していると分かります。

※連結財務諸表規則とは連結財務諸表を作成するにあたっての指針・規則です。

日本の会計基準を適用している場合

以下は、イオン株式会社の有価証券報告書 第5【経理の状況】 1連結財務諸表及び財務諸表の作成方法 の1文です。


当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という。)に基づいて作成しております。


出典:イオン株式会社第96期有価証券報告書

上記のようなシンプルのものであれば日本基準を採用しています。

米国会計基準を適用している場合

以下は、野村ホールディングス株式会社の有価証券報告書 第5【経理の状況】 1連結財務諸表及び財務諸表の作成方法 の1文です。


当社の連結財務諸表は「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第95条の規定に従い、米国預託証券の発行に関して要請されている会計処理の原則および手続ならびに表示方法、すなわち、米国において一般に公正妥当と認められた会計原則に基づき作成されております。


出典:野村ホールディングス株式会社第17期有価証券報告書

上記のように米国において一般に公正妥当と認められた会計原則に基づいていると記載があれば米国会計基準を適用した財務諸表だと分かります。

2.個別財務諸表についてはIFRSに基づいたものは公表されない

 有価証券報告書の経理の状況を見ると連結財務諸表だけではなく単に財務諸表というものも公表されていることも分かります。これは個別財務諸表というものであり、その企業、すなわち親会社だけの決算書が示されているものです。

 IFRSで財務諸表が作成されているからといって、個別財務諸表もIFRSと誤って分析することがないように注意が必要です。

補足.個別財務諸表と連結財務諸表の違い

 連結財務諸表は企業グループに関する決算書であるのに対して、個別財務諸表は該当企業1社の決算書という違いがあります。

 イメージとしてはたくさんある企業の資産・負債、収益・費用を合算して連結財務諸表がつくられているとお考えください。

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