新リース基準対応、契約一覧はどの項目で作るべきか
最初に作るべきものは契約一覧
新リース会計基準への対応では、いきなり会計処理やソフト選定から始めるよりも、まず契約一覧を作ることが重要です。
新リース基準では、借手はリース開始日に使用権資産とリース負債を計上することが定められています(企業会計基準第34号第25項、第26項)。
ただし、その前に必要になるのが、契約がリースを含むかどうかの判断です。
リースの識別については、企業会計基準適用指針第33号第5項から第8項で整理されています。
つまり、実務上は次の順番になります。
- 対象になり得る契約を洗い出す
- 契約一覧を作る
- リースを含む契約かどうかを判断する
- リース期間や支払条件を整理する
- 使用権資産・リース負債の概算を行う
- 必要に応じてソフト導入や監査法人対応に進む
契約一覧は、単なる管理表ではありません。
新リース基準対応の出発点になる資料です。
契約名だけで判断しない
契約一覧を作るときに注意すべきなのは、「リース契約」という名称の契約だけを集めないことです。
確認対象になり得る契約には、例えば次のようなものがあります。
- オフィス、店舗、倉庫、工場などの賃貸借契約
- 車両、複合機、IT機器などのリース契約
- サーバー、通信設備、専用設備の利用契約
- 業務委託契約やサービス契約の中に特定資産の使用が含まれるもの
- 親会社・グループ会社から資産を利用している契約
契約書の名称が「賃貸借契約」「利用契約」「業務委託契約」でも、内容によってはリースを含む可能性があります。
そのため、契約名だけではなく、対象資産、使用期間、支払条件、使用方法を確認する必要があります。
契約一覧に入れるべき項目
契約一覧には、少なくとも次の項目を入れることをおすすめします。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 管理番号 | 契約ごとに一意の番号を付ける |
| 契約名称 | 契約書上の名称 |
| 契約相手先 | 契約先の名称 |
| 契約区分 | 賃貸借、リース、サービス、業務委託など |
| 対象資産 | オフィス、車両、複合機、設備、サーバーなど |
| 使用部署・拠点 | どの部署・拠点で使用しているか |
| 契約開始日 | 契約上の開始日 |
| 契約終了日 | 契約上の終了日 |
| 解約不能期間 | 解約できない期間 |
| 自動更新条項 | 自動更新の有無 |
| 延長オプション | 延長できる権利の有無 |
| 解約オプション | 中途解約できる権利の有無 |
| 月額支払額 | 月額又は定期支払額 |
| 支払頻度 | 月払い、年払い、一括払いなど |
| 固定・変動 | 固定リース料か、変動要素があるか |
| 短期リース候補 | リース期間12か月以内の可能性 |
| 少額リース候補 | 少額リースの簡便的取扱いの対象可能性 |
| リースを含むか | リース識別の一次判断 |
| リース期間案 | 会計上見積もるリース期間 |
| 影響額概算 | 使用権資産・リース負債の概算対象か |
| 契約書所在 | 原本又はPDFの保管場所 |
| 担当部署 | 契約内容を確認できる部署 |
| 判断メモ | リース識別や期間判断の根拠 |
| 監査法人・親会社確認 | 確認が必要かどうか |
最初から完璧な一覧を作る必要はありません。
まずは対象になり得る契約を漏れなく集め、後から判断欄を埋めていく方が現実的です。
リース期間に関する項目は特に重要
契約一覧で特に重要なのが、リース期間に関する項目です。
リース期間は、使用権資産・リース負債の金額に大きく影響します。
企業会計基準第34号第15項、第31項、企業会計基準適用指針第33号第17項では、リース期間の考え方が整理されています。
実務上は、契約書上の期間だけでなく、次のような要素も確認する必要があります。
- 解約不能期間
- 延長オプション
- 解約オプション
- 自動更新条項
- 更新する経済的インセンティブ
- 内装投資や設備投資の有無
- 移転コスト
- 代替資産の有無
例えば、契約書上は3年契約でも、実質的に更新が見込まれる場合があります。
逆に、長期契約であっても、解約可能性をどのように考えるかが論点になることがあります。
契約一覧の段階でこれらの情報を整理しておくと、後の影響額試算や監査法人対応が進めやすくなります。
短期リース・少額リースの候補も分けておく
契約一覧では、短期リースや少額リースの候補も分けておくと実務上便利です。
短期リースについては、企業会計基準適用指針第33号第4項(2)、第20項で整理されています。
少額リースについては、同適用指針第22項、第23項、BC39からBC45が参考になります。
ただし、最初の一覧作成段階で最終判断まで完了させる必要はありません。
まずは候補として分類し、後で会計方針や監査法人との確認を踏まえて整理する方が現実的です。
契約一覧を作るときの情報源
契約一覧を作るときは、契約管理システムだけを見ても漏れが出る可能性があります。
次のような情報源を組み合わせて確認することが有効です。
- 契約管理台帳
- 総務部門が保管している契約書
- 経理の支払先一覧
- 勘定科目別の支払明細
- 固定資産台帳
- リース会社からの請求書
- 拠点・店舗・工場ごとの賃貸借契約
- 親会社・グループ会社との契約一覧
特に、地代家賃、リース料、賃借料、保守料、業務委託費、通信費などに含まれる契約は確認対象になり得ます。
会計システムの支払データから契約を逆引きすることで、契約管理台帳に載っていない契約を発見できることもあります。
監査法人・親会社に説明できる形にする
契約一覧は、社内管理だけでなく、監査法人や親会社への説明資料にもなります。
そのため、単に契約名と金額を並べるだけでは不十分です。
少なくとも次の点を説明できる形にしておくことが望ましいです。
- どの範囲の契約を調査したか
- どの契約を対象外と判断したか
- リースを含むと判断した契約はどれか
- 短期リース・少額リースの候補はどれか
- リース期間をどのように見積もったか
- 判断に迷う契約はどれか
- 親会社又は監査法人に確認すべき契約はどれか
このように整理しておくと、後から「なぜこの契約を対象にしたのか」「なぜこの契約を対象外にしたのか」を説明しやすくなります。
まとめ
新リース基準対応では、契約一覧の作成が最初の重要なステップです。
契約一覧には、契約名、契約相手先、対象資産、契約期間、支払条件だけでなく、延長オプション、解約オプション、短期リース・少額リースの候補、リースを含むかどうかの判断メモまで入れておくと実務で使いやすくなります。
特に重要なのは、次の3点です。
- 契約名だけで判断しない
- リース期間に関する情報を早めに集める
- 判断根拠を監査法人・親会社に説明できる形で残す
契約一覧が整理できていれば、影響額試算、ソフト選定、監査法人対応を進めやすくなります。
一方で、契約一覧が曖昧なまま進めると、後から契約漏れや判断のやり直しが生じる可能性があります。
新リース基準対応では、まず契約一覧を作り、リースの識別とリース期間の判断につなげることが重要です。
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