新リース基準対応は、ソフト導入前に契約一覧とリースの識別を整理すべき理由
ソフトを入れれば終わるわけではない
新リース会計基準への対応では、リース会計ソフトや固定資産システムの導入を検討する会社が増えています。
もちろん、契約件数が多い会社では、ソフトウェアの利用は有効です。
リース料総額、利息相当額、使用権資産、リース負債、償却費、注記情報をExcelだけで管理し続けるのは、一定の限界があります。
しかし、ソフトを導入する前に整理しておくべきことがあります。
それが、契約一覧の整備とリースの識別です。
ここを整理しないままソフトを導入しても、入力すべき契約が漏れたり、そもそもリースに該当するかどうかの判断が曖昧なまま計算だけが進んでしまう可能性があります。
まず必要なのは契約一覧の作成
新リース基準対応の最初の実務は、会計処理の計算ではなく、契約の洗い出しです。
対象になり得る契約は、いわゆる「リース契約」だけではありません。
例えば、次のような契約も確認対象になります。
- オフィス、店舗、倉庫、工場などの賃貸借契約
- 車両、複合機、IT機器などのリース契約
- サーバー、通信設備、専用設備の利用契約
- 業務委託契約やサービス契約の中に特定資産の使用が含まれるもの
- 親会社・グループ会社から利用している資産に関する契約
契約書の名称が「リース契約」かどうかだけで判断すると、対象契約を見落とす可能性があります。
そのため、まずは契約一覧を作成し、契約名、契約相手先、対象資産、契約開始日、契約終了日、月額支払額、延長・解約オプションの有無を整理する必要があります。
リースの識別が必要になる
新リース基準では、契約がリースを含むかどうかを判断する必要があります。
企業会計基準第34号第25項、第26項では、借手はリース開始日に使用権資産とリース負債を計上することが定められています。
ただし、その前提として、そもそも契約がリースを含むかどうかを識別しなければなりません。
リースの識別については、企業会計基準適用指針第33号第5項から第8項で整理されています。
実務上は、特定された資産の使用を支配する権利があるかどうかを確認することになります。
つまり、ソフトに契約情報を入力する前に、次の判断が必要です。
- 契約に特定された資産が含まれているか
- その資産を使用する権利を顧客が支配しているか
- 使用期間にわたり、経済的便益を得る権利があるか
- 資産の使用方法を指図する権利があるか
この判断は、ソフトウェアが自動で完結させるものではありません。
最終的には、契約内容を読んだうえで会計上の判断を行う必要があります。
リース期間の判断も先に整理する
リースの識別の次に重要なのが、リース期間の判断です。
企業会計基準第34号第15項、第31項、企業会計基準適用指針第33号第17項では、リース期間の考え方が整理されています。
実務上は、契約書上の期間だけでなく、延長オプションや解約オプションも確認する必要があります。
例えば、契約書上は3年契約でも、実質的に更新が見込まれる場合があります。
逆に、契約書上は長期契約でも、解約可能性が高い場合には慎重な検討が必要です。
リース期間は、使用権資産・リース負債の金額に直接影響します。
そのため、契約一覧を作る段階で、少なくとも次の情報を整理しておくべきです。
- 契約開始日
- 契約終了日
- 自動更新条項の有無
- 延長オプションの有無
- 解約オプションの有無
- 解約不能期間
- 実務上更新する可能性が高いかどうか
- 重要な内装投資、移転コスト、代替資産の有無
これらを整理しないまま計算すると、後からリース期間を見直すことになり、計算結果の修正が大きくなる可能性があります。
ソフト導入前に整理すべき項目
ソフトウェアを選定する前に、少なくとも次の項目を整理しておくと、その後の導入がスムーズになります。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 契約一覧 | 対象になり得る契約を一覧化しているか |
| リースの識別 | 契約がリースを含むか判断しているか |
| 短期リース | リース期間が12か月以内か |
| 少額リース | 簡便的な取扱いの対象になる可能性があるか |
| リース期間 | 延長・解約オプションを考慮しているか |
| 支払条件 | 固定リース料、変動リース料、支払時期を整理しているか |
| 割引率 | 親会社・監査法人と方針を確認する必要があるか |
| 税務論点 | 法人税・消費税などの確認事項があるか |
| 監査対応 | 判断根拠を説明できる資料があるか |
短期リースについては、企業会計基準適用指針第33号第4項(2)、第20項で整理されています。
少額リースについては、同適用指針第22項、第23項、BC39からBC45が参考になります。
ソフト選定はその後でよい
契約一覧とリースの識別が整理できると、ソフト選定の判断もしやすくなります。
例えば、次のような判断が可能になります。
- 契約件数が少ないため、当面はExcel管理で足りる
- 契約件数は多いが、定型的な契約が中心なので簡易な管理で足りる
- 契約件数が多く、更新・解約・変更も多いため、専用ソフトが必要
- 親会社連結や監査対応のため、システム連携が必要
- まずは影響額試算だけ行い、本格導入は次フェーズにする
逆に、契約一覧がない状態でソフトを比較しても、必要な機能を正しく判断できません。
「どのソフトがよいか」を考える前に、まず「自社にどのような契約がどれだけあるか」を把握することが重要です。
まとめ
新リース基準対応では、ソフトウェアの導入そのものよりも、その前段階の整理が重要です。
特に、次の2つは早めに着手すべきです。
- 契約一覧の作成
- リースの識別の判断
この2つが整理できていれば、影響額の概算、ソフト選定、親会社・監査法人への説明が進めやすくなります。
一方で、契約一覧やリースの識別が曖昧なままソフト導入を進めると、後から対象契約の漏れや判断のやり直しが生じる可能性があります。
新リース基準対応では、まず契約を整理し、そのうえで会計判断とシステム対応を進めることが実務上重要です。
九段パートナーズ会計事務所の新リース会計基準対応支援
新リース会計基準の影響額を、まず30分で確認しませんか。
九段パートナーズ会計事務所では、上場会社の子会社・中堅企業・会計監査人設置会社向けに、新リース会計基準への対応支援を行っています。
リース契約の件数・月額・残存期間の概要をもとに、使用権資産・リース負債の概算額、財務指標への影響、今後の対応優先度を確認します。

