新リース会計基準とIFRS 16の違いは?

日本基準適用企業が知っておくべきポイント


新リース会計基準はIFRS 16と何が違うのか

2027年4月から施行される新リース会計基準(企業会計基準第34号)は、国際会計基準のIFRS 16を参考に作られています。しかし、日本の実情に合わせていくつかの違いがあります。

「IFRSの話は上場企業だけでしょ?」と思っている方も多いかもしれませんが、今回の改正は日本基準を採用しているすべての企業に影響します。

この記事では、新リース会計基準とIFRS 16の主な違いと、日本基準適用企業が知っておくべき実務ポイントを解説します。


IFRS 16とは

IFRS 16は、国際会計基準審議会(IASB)が2016年に公表し、2019年1月から強制適用されたリースに関する国際会計基準です。

IFRS 16の核心

IFRS 16の最大の特徴は、借手側のすべてのリース(短期・少額を除く)をオンバランス処理することです。

旧来の基準では、ファイナンスリースとオペレーティングリースを区別していましたが、IFRS 16ではこの区別を撤廃。すべてのリースについて、使用権資産とリース負債を計上することを求めています。


新リース会計基準(ASBJ第34号)とIFRS 16の主な違い

違い①:借手の会計処理モデル

項目 IFRS 16 新リース会計基準(ASBJ第34号)
基本モデル 単一モデル(すべてオンバランス) 単一モデル(原則同じ)
短期リース 適用免除可 適用免除可
少額資産 適用免除可 適用免除可
簡便法 限定的 より多くの簡便法あり

基本的な考え方はIFRS 16と同じですが、日本の新基準では簡便的な処理方法が多く認められています。

違い②:貸手の会計処理

IFRS 16では、貸手の会計処理は旧来の区別(ファイナンスリース・オペレーティングリース)を維持しています。新リース会計基準も同様です。

違い③:簡便法の範囲

日本の新基準では、IFRS 16より多くの簡便的な処理方法が認められています。これは、中小企業を含む幅広い企業への配慮です。

主な簡便法:

ポートフォリオ適用
類似した特性を持つリース契約をまとめて処理できます。

リース料が均等な場合の簡便処理
一定の条件を満たす場合、簡便的な方法で使用権資産・リース負債を計算できます。

オペレーティングリースの簡便処理
従来のオペレーティングリースと同様の処理が認められる場合があります。

違い④:適用時期

IFRS 16 新リース会計基準
強制適用 2019年1月(国際基準) 2027年4月(日本)
早期適用 2024年4月以降可能

日本基準適用企業への実務上のポイント

ポイント①:簡便法を最大限活用する

日本の新基準では、IFRS 16より多くの簡便法が認められています。自社の契約内容に応じて、適用可能な簡便法を会計士と確認しましょう。

特に、リース件数が多い企業では、簡便法の活用が経理負担を大きく軽減できます。

ポイント②:移行時の経過措置を確認する

新基準への移行時には、経過措置が設けられています。過去の財務諸表の遡及修正が必要かどうか、どの方法を選択するかによって、移行時の負担が変わります。

ポイント③:旧基準との比較

日本の旧基準(企業会計基準第13号)では、ファイナンスリースとオペレーティングリースを区別していました。新基準では、この区別が事実上なくなります。

ただし、リース期間が12ヶ月以内の短期リースや、少額資産のリースは引き続きオフバランス処理が認められます。


IFRS適用企業との比較:何が同じで何が違うか

すでにIFRS 16を適用している企業(主に上場企業のIFRS任意適用企業)と、日本の新基準を適用する企業では、以下の違いがあります。

項目 IFRS 16適用済み企業 新基準適用企業(2027年〜)
基本的な考え方 同じ 同じ
簡便法の範囲 限定的 より広い
追加の負担 なし(対応済み) 新たに対応が必要
財務指標への影響 すでに織り込み済み 2027年から影響が出る

中小企業会計指針・会計要領との関係

中小企業の会計処理の指針として、「中小企業会計指針」や「中小企業会計要領」があります。

現時点では、これらの中小企業向け会計基準が新リース会計基準の内容に合わせて改正されるかどうかは確定していません。

非上場の中小企業については、自社がどの会計基準に基づいて計算書類を作成しているかによって、適用の必要性が変わる可能性があります。

自社の状況については、顧問税理士・会計士に確認することをおすすめします。


実務対応のロードマップ

2026年前半:現状把握

  • リース契約・賃貸借契約の全件洗い出し
  • 契約の性質(短期・少額の該当有無)の確認
  • 財務影響の概算試算

2026年後半:対応方針の決定

  • 適用する簡便法の検討
  • 会計システムの対応確認
  • 金融機関への事前説明

2027年前半:移行準備

  • 移行時の経過措置の方法を決定
  • 管理台帳の整備
  • 経理担当者への研修

2027年4月:強制適用開始


よくある質問

Q. 税務上の処理もIFRS 16と同様になりますか?

いいえ。日本の税務上の取扱いは、会計基準の改正とは別に検討されます。現時点では、税務上の処理がすぐに変わるわけではありません。

Q. IFRS任意適用企業はすでに対応済みですか?

はい。IFRS 16はすでに2019年から適用されているため、IFRS任意適用企業は対応済みです。

Q. 新基準を早期適用することのメリットはありますか?

2024年4月以降の事業年度から早期適用が可能です。早期に対応することで、2027年の一斉適用時の混乱を避け、余裕を持って準備できます。


まとめ

  • 新リース会計基準はIFRS 16を参考にしており、基本的な考え方は同じ
  • 日本の新基準では、中小企業への配慮として多くの簡便法が認められている
  • 2027年4月から日本基準適用企業に強制適用される
  • 短期リース・少額資産は引き続きオフバランス処理が可能
  • 中小企業への適用については、会計指針の改正動向も確認が必要

新リース会計基準の対応は、自社の契約内容と財務状況を把握した上で、適切な簡便法を選択することが重要です。「何から始めればいいかわからない」という方も、まずは契約の棚卸しからご相談ください。


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この記事は、企業会計基準委員会(ASBJ)および国際会計基準審議会(IASB)の公開情報をもとに作成しています。個別の会計・税務判断については、専門家にご相談ください。