海外在住中に日本の不動産を売却したら税金はどうなる?
非居住者の譲渡所得申告を徹底解説
海外在住中に日本の不動産を売却するとき、税金の準備はできていますか?
海外赴任や海外移住中に、日本に残した不動産を売却するケースは少なくありません。しかし、非居住者が日本の不動産を売却する場合、居住者とは異なる税務上のルールが適用されます。
売却後に税額を知って慌てる——そうならないために、売却前に税務の基本を把握しておくことが重要です。
この記事では、非居住者が日本の不動産を売却した場合の税金の仕組み、計算方法、注意点、そして売却前にやるべきことをわかりやすく解説します。
非居住者の不動産売却:まず知っておくべき3つのこと
1. 日本の税金がかかる
非居住者であっても、日本国内の不動産を売却して得た譲渡所得は日本の所得税の課税対象になります。
「海外に住んでいるから関係ない」は通用しません。
2. 買主による源泉徴収が必要になる場合がある
非居住者から不動産を購入する場合、買主が売買代金の10.21%を源泉徴収して税務署に納付する義務があります。
ただし、売買代金が1億円以下かつ買主が自己の居住用に購入する場合は、源泉徴収が不要になる例外があります。
3. 確定申告が必要
売却した翌年の3月15日までに、譲渡所得の確定申告が必要です。源泉徴収されていても、申告は別途必要です。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は次の計算式で求めます。
譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用
売却価格
実際に売却した金額です。
取得費
不動産を取得した際にかかった費用の合計です。主なものは以下の通りです。
- 購入代金(土地・建物)
- 仲介手数料(購入時)
- 登記費用・印紙代
- 建物の減価償却後の残存価額
**取得費資料がない場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使うことができます。**ただし、実際の取得費の方が高い場合は、資料をもとに計算した方が税負担を減らせます。
譲渡費用
売却時にかかった費用です。主なものは以下の通りです。
- 仲介手数料(売却時)
- 測量費
- 解体費(売却のために行った場合)
- 印紙代
税率:長期譲渡と短期譲渡で異なる
譲渡所得の税率は、不動産の保有期間によって異なります。
| 区分 | 保有期間 | 税率(所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で5年超 | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で5年以下 | 39.63% |
保有期間が5年を超えるかどうかで税率が約2倍変わります。売却タイミングは税額に大きな影響を与えます。
非居住者特有の注意点
居住用不動産の3,000万円特別控除が使えない場合がある
日本に居住していた場合、マイホームの売却では譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。
ただし、非居住者の場合は適用要件が限定されるため、注意が必要です。出国前から売却を検討している場合は、居住中に売却する方が有利なケースもあります。
買主が源泉徴収する場合の影響
買主が源泉徴収を行った場合、売買代金から10.21%が差し引かれた金額を受け取ることになります。
確定申告で実際の税額を計算すると、源泉徴収額より少なくなる場合は還付を受けられます。逆に不足する場合は追加納付が必要です。
納税管理人が必要
非居住者が確定申告を行うためには、納税管理人の選任が必要です。税理士を納税管理人にすることで、申告から納付まで一括して任せることができます。
取得費資料がないときはどうする?
不動産を売却する際に最も困るのが、取得費を証明する資料がないケースです。
特に、相続で取得した不動産や、購入から長年経過した不動産では、当時の契約書や領収書が見当たらないことがあります。
対応策
概算取得費(5%)を使う
売却価格の5%を取得費とみなす方法です。計算はシンプルですが、実際の取得費より大幅に低くなる場合が多く、税負担が重くなります。
代替資料で取得費を立証する
通帳の出金記録、当時の不動産広告、固定資産税評価額の推移など、取得費を合理的に推定できる資料があれば活用できます。
税理士に相談する
取得費の立証は専門的な判断が必要です。税理士に相談することで、利用可能な資料を最大限に活かした計算が可能になります。
売却前にやるべきこと
売却後に慌てないために、売却前に以下を確認しておきましょう。
税額の概算を把握する
売却価格が決まる前でも、現時点での情報をもとに概算税額を試算できます。売却益がいくらになりそうか、手元に残る金額はいくらかを把握してから売却判断をすることが重要です。
取得費資料を整理する
取得時の売買契約書、仲介手数料の領収書、登記費用の資料などを確認しておきます。資料が揃っているほど、税負担を正確に計算できます。
納税管理人を選任する
売却後の確定申告に備えて、税理士を納税管理人に選任しておきましょう。売却後に慌てて探すより、事前に依頼しておく方が安心です。
売却タイミングを確認する
保有期間が5年を超えるかどうか(長期・短期の判定)を確認します。売却年を1年ずらすだけで、税率が大きく変わる場合があります。
売却後の申告の流れ
- 売買契約書・取得費資料・譲渡費用資料を整理する
- 納税管理人(税理士)に資料を送付する
- 譲渡所得の計算・申告書案の確認
- 翌年3月15日までに申告・納付
- 源泉徴収分の還付がある場合は還付を受ける
よくある質問
Q. 売却した年に日本に帰国した場合は?
帰国した年の途中から居住者に戻るため、居住者として申告することになります。居住者・非居住者どちらの期間に売却したかが重要になります。
Q. 売却損が出た場合は申告が必要ですか?
損失が出た場合でも申告は可能です。ただし、非居住者の場合は損益通算や繰越控除の適用に制限があります。
Q. 相続した不動産を売却する場合の取得費は?
相続で取得した場合、被相続人(亡くなった方)の取得費を引き継ぎます。被相続人が購入した際の契約書等が必要になるため、相続時に資料を確認しておくことが重要です。
Q. 買主が源泉徴収しなかった場合はどうなる?
本来、源泉徴収義務がある場合に行わなかったときは、買主側にペナルティが発生する可能性があります。売主側の申告義務はなくなりませんので、確定申告は必ず行います。
Q. 売却代金を日本から海外に送金できますか?
税務上の問題とは別に、外国為替取引の手続きが必要な場合があります。また、多額の送金は金融機関での確認手続きが発生することがあります。
まとめ
- 非居住者でも日本の不動産売却には日本の税金がかかる
- 保有5年超(長期)か5年以下(短期)で税率が大きく異なる
- 買主による源泉徴収が必要になる場合がある
- 取得費資料は事前に整理しておくことが重要
- 売却前に税額を概算把握しておくと安心
- 納税管理人(税理士)を事前に選任しておくことをおすすめ
海外在住中の不動産売却は、申告期限・源泉徴収・取得費資料など、注意すべき点が多くあります。売却後ではなく、売却前に税務の専門家に相談することが、後悔のない売却につながります。
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この記事は、国税庁の公開情報をもとに作成しています。個別の税務判断については、税理士にご相談ください。

