3,000万円控除と住宅ローン控除、買い替え時にどう比較する?
国内のマイホームのマンションを売却し、新居を購入する方向け|根拠確認日:2026年10月15日
3,000万円特別控除と新居の住宅ローン控除は、一定の年の関係にあると、同じ人が両方を使うことはできません。選ぶ前に、旧宅の売却で減る税額と、新居で実際に使える住宅ローン控除の合計を比較します。
「3,000万円」と「住宅ローン残高」を比べるのではありません。両制度の適用条件を確認したうえで、税負担がいくら変わるかを同じ単位で見ます。
申告が必要か、何を準備するかから確認したい方は、マンション売却後の確定申告・必要書類の解説もご覧ください。
1. 3,000万円控除と住宅ローン控除は、引く対象が違う
| 比較する点 | 3,000万円特別控除 | 住宅ローン控除 |
|---|---|---|
| 何から引くか | 旧宅を売った利益(譲渡所得)から引く | 原則として各年の所得税から引く。引ききれない額は、一定の範囲で翌年度の住民税から控除される場合がある |
| 判断に使う金額 | 控除を使う場合と使わない場合の売却にかかる税額の差 | 各年の要件・税額の上限を反映した、実際に使える控除額の合計 |
| 主な確認事項 | 旧宅の居住履歴、売却時期、過去の特例、売却相手など | 新居の入居年・住宅区分、借入条件、各年の所得・税額など |
3,000万円控除は、税金が3,000万円減る制度ではありません。売却益が1,000万円なら、他の条件を満たす場合に、その1,000万円を控除することになります。
制度の概要:国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例、No.1211-1 住宅の新築等と住宅ローン控除。中古住宅はNo.1211-3、一定の買取再販住宅はNo.1211-2など、取得する住宅に対応した制度を確認します。
2. 併用制限は、同じ年の売却・購入だけではない
新居に入居した年を基準に、旧宅売却で3,000万円特別控除を使う年との関係を確認します。
| 旧宅売却の特例を使う年 | 新居の住宅ローン控除との関係 |
|---|---|
| 2024年・2025年 入居年の前2年 | この期間に3,000万円特別控除を使うと、併用できない |
| 2026年 入居した年 | 同じ年でも両方を使えない |
| 2027年・2028年・2029年 入居年の後3年 | 住宅ローン控除の対象となる新居以外の資産(旧宅など)を売り、3,000万円特別控除を使う場合も併用できない |
「売却と購入の年を1年ずらせば両方使える」とは限りません。売買契約年だけで判断せず、税務上の譲渡年と実際の入居年を整理します。
表の期間外なら自動的に両方使える、という意味でもありません。旧宅の特例を使える売却期限や、新居側の要件を別途満たす必要があります。
根拠:国税庁 No.3302の住宅ローン控除との関係。この表は同じ人についての一般的な整理です。共有名義や夫婦の借入れでは、所有・持分・借入れを人ごとに確認します。
3. 比較は「適用できるか」「いくら減るか」の順に進める
両方の適用条件を確認
旧宅の居住・所有・売却履歴、新居の入居・住宅区分・借入条件を整理します。条件を満たさない制度は、比較の選択肢に入れません。
旧宅の税額差を計算
売却収入から取得費・譲渡費用を引き、特例あり・なしの税額を比べます。建物の取得費は、減価償却による調整後の金額を使います。
新居の控除額を年ごとに積算
住宅ローン残高、借入限度額、所得税・住民税の上限、各年の適用要件を反映し、実際に使える見込みを積み上げます。
住宅ローン控除は「最大額×年数」で決めない
適用する控除率・借入限度額・期間は、入居年や住宅の区分などで異なります。返済による残高の減少、所得の変動、退職・休職、繰上返済なども控除額や適用条件に影響します。制度上の最大額を、そのまま受け取れる金額として比較しないようにします。
売却益によって、売却した年の住宅ローン控除が使えないこともある
住宅ローン控除には、各年の合計所得金額の要件があります。合計所得金額の判定では、土地・建物の譲渡所得は特別控除前の金額を含めます。売却代金そのものではなく、取得費・譲渡費用を差し引いた所得です。
通常の合計所得金額2,000万円以下の要件を超える年は、住宅ローン控除を使えません。翌年以後に所得が基準以下となり、他の要件も満たせば適用できる場合があります。ただし、3,000万円特別控除を使ったことによる併用制限は別問題です。床面積等によってさらに所得要件がある場合も確認します。
根拠:国税庁 合計所得金額2,000万円の判定、No.1211-1、No.3261 建物の取得費の計算。
4. 比較例:売却益が違えば、有利な選択も変わる
説明用の架空例の前提
- 2026年に旧宅を売却して新居に入居。同じ人が両制度の対象となるが、併用はできない。
- 旧宅は売却年の1月1日現在で所有8年。通常の長期譲渡の税率20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)で概算する。
- 10年超所有の軽減税率など他の特例、他の所得控除・税額控除の影響は考慮しない。売却益は減価償却の調整後。
- 住宅ローン控除を選んだ場合、各年の所得要件・税額上限等を織り込んだ実際の軽減見込額の合計を180万円と仮定。制度の最大額や、どなたにも適用される額ではない。
| 特別控除前の売却益 | 3,000万円控除による税額軽減の概算 | 住宅ローン控除の軽減見込額 | この仮定での比較 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 203万1,500円 | 合計180万円 | 3,000万円控除の方が23万1,500円大きい |
| 300万円 | 60万9,450円 | 合計180万円 | 住宅ローン控除の方が119万550円大きい |
計算は1,000万円×20.315%=203万1,500円、300万円×20.315%=60万9,450円です。3,000万円特別控除で売却益がゼロになる前提なので、この税額が軽減額になります。比較を分かりやすくするため、申告・納付時の端数処理等は省略しています。
住宅ローン控除を選ぶ場合、旧宅の売却益は課税対象となる一方、控除は入居年から各年の要件に従って受けます。売却年の納税額にもその年に使える控除等を反映するため、納税資金と軽減を受ける時期も確認します。この表は単純な合計額の比較で、将来の所得変動や金利・時間価値を織り込んだ確定的な有利不利の判定ではありません。
税率の根拠:国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算。所有期間5年以下の場合や、所有10年超の特例が関係する場合は、この計算をそのまま使用できません。
5. 比較のために準備する資料
| 整理する内容 | 主な資料・情報 |
|---|---|
| 旧宅の売却益 | 購入・売却時の契約書、精算書、仲介手数料などの明細、土地・建物の金額、過去の減価償却資料 |
| 年の関係・過去の特例 | 旧宅に住んでいた期間、新居への入居日、引渡日、過去の確定申告書、住宅ローン控除を受けた年 |
| 新居の住宅ローン控除 | 新居の契約書、住宅性能・床面積の資料、借入条件、年末残高、返済予定、持分・債務者 |
| 各年に実際に使える額 | 源泉徴収票などの所得資料、住民税の通知、今後の収入・退職予定、他の控除の状況 |
これは比較・相談のための準備資料です。すべてを申告書に添付するという意味ではありません。資料の不足があれば、先に不足項目を整理してください。
6. 申告前後によくある疑問
3,000万円控除で税額がゼロなら、申告しなくてよいですか?
この特例を受けるための確定申告が必要です。税額がゼロになることと、申告が不要になることは別です。
先に住宅ローン控除を使い、後から旧宅を売った場合は?
新居に入居した年の翌年から3年目の年末までに旧宅を売り、3,000万円特別控除を使う場合は、過去に受けた住宅ローン控除の申告を見直す手続が関係します。該当する過去年分について、売却した年分の確定申告期限までに修正申告書または期限後申告書を提出し、住宅ローン控除に相当する税額を納付する取扱いです。過去の申告書・年末調整資料も含め、申告前に確認してください。
根拠:国税庁 居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例等の適用を受ける場合の修正申告。売却年の前3年以内の各年分についての取扱いを確認します。
申告後に、有利な方へ自由に変更できますか?
一度選んだ特例を、後から常に自由に選び直せるとは限りません。計算誤りの訂正と制度の選択変更は分けて考え、申告済みの場合は、提出内容・時期・適用した制度から手続の可否を確認します。
夫婦・共有名義の場合も、この比較だけで判断できますか?
この記事は1人の選択を説明しています。共有名義や夫婦の借入れがある場合は、誰が旧宅の持分を売り、誰が新居の持分と借入れを持つかを分けて確認します。世帯合計だけで判断しないことが大切です。
売却申告と新居の控除をまとめて確認したい方へ
売却・入居の年が前後する場合、すでに住宅ローン控除を受けている場合、共有名義や所得要件の確認が必要な場合は、申告前の整理が重要です。九段パートナーズ会計事務所では、マンション売却の確定申告について、資料とご相談内容を確認して対応範囲をご案内します。
初回の概要確認と見積りは無料です。個別の税額計算・特例判定は契約後に行います。買い替えや住宅ローン控除の詳しい比較は、内容に応じて個別見積りとなります。受任可否・日程は確認後にご案内します。海外居住・出国や帰国がある方は海外居住者向けの専用窓口をご利用ください。
この記事の対象と根拠確認
2026年10月15日に国税庁の上記資料を確認した一般的な説明です。投資用物件の売却、買換えの課税繰延べ、譲渡損失の特例などは別の検討が必要です。住宅ローン控除の詳細は入居年・取得形態・住宅区分に対応した資料で確認し、個別の税額・適用結果は契約資料と申告状況に基づいて判断します。
記事作成:九段パートナーズ会計事務所

