IFRS財務諸表の分析方法と日本基準との違い|実務で使える読み方を解説

IFRS財務諸表の分析は、作成基準を確認したうえで、会計方針、利益の内訳、キャッシュ・フローの順に読み進めると整理しやすくなります。日本基準との違いを踏まえ、同じ名前の利益や指標も定義を確かめて比較します。

IFRS財務諸表を読む4つのステップ
01

比較の前提

作成基準・連結範囲・対象期間・通貨をそろえる。

02

会計方針

重要な会計方針、見積り、当期の変更点を読む。

03

利益の内訳

重要な損益項目と、会社独自の指標の定義を確認。

04

現金との関係

営業利益等と営業キャッシュ・フローの差を確かめる。

分析を進めるための実務上の整理例です。この順序自体を会計基準が義務付けているわけではありません。

1.作成基準は「経理の状況」と注記で確認する

有価証券報告書では「経理の状況」の作成方法や、財務諸表の作成の基礎に関する注記を確認します。過去の条文番号や表の見た目だけで判定せず、その書類が何に準拠していると説明しているかを読み取ります。IFRSへの準拠の明示はIAS第1号第16項で定められています。[1]

確認対象読み取る内容
会計基準IFRS、日本基準、米国会計基準など、準拠する基準の明示。
対象と期間連結か個別か、対象会社、決算日・対象期間、表示通貨・単位。
比較条件連結範囲や決算期の変更、会計方針の変更、比較数値の組替え・修正。
監査の対象監査報告書が対象とする財務諸表と期間。決算説明資料全体が監査対象とは限らない。

2.連結と個別は、それぞれの作成基準を確認する

連結財務諸表は企業グループ、個別財務諸表はその会社単体を対象とします。連結では子会社等の数値を取り込み、グループ内の債権・債務や取引等を消去するため、単純な合算ではありません。[2]

連結がIFRSでも、個別が同じ基準とは限りません。一方、個別のIFRS財務諸表が一切公表されないという説明も適切ではありません。財務諸表等規則第326条第2項は、同条第1項による財務諸表等に加え、指定国際会計基準による財務諸表等を作成する場合を定めています。実際の書類ごとに作成基準を確認してください。[3]

3.会計方針の違いを、利益の読み方につなげる

重要な会計方針と当期の変更点を読み、比較に影響する項目を絞ります。例えば、買収で生じた「のれん」は、日本基準とIFRSで規則的な償却の扱いが異なります。

比較項目日本基準IFRS
のれんの償却原則として20年以内の効果が及ぶ期間にわたり、定額法等の合理的な方法で規則的に償却。規則的な償却は行わない。
減損の確認減損会計の対象となる。少なくとも毎年、及び減損の兆候がある場合に減損テストを行う。
分析時の着眼点のれん償却費と減損損失の額・内容を確認。減損損失の有無、検討に用いた前提や関連する注記を確認。

日本基準では、のれんの金額に重要性が乏しい場合の処理なども定められています。償却の有無だけで事業の収益力が高い・低いとは判断できません。買収の時期・規模や減損の影響を併せて読みます。[4]

4.利益の内訳とキャッシュ・フローを突き合わせる

大きな売却損益、減損損失、引当金の変動などは、発生理由と継続性を確認します。会社が示す調整後利益やEBITDA等は、何を加減しているかを読み、財務諸表上の数値とのつながりを確かめます。一時的に見える項目を一律に除外すると、事業の実態を見誤る場合があります。

キャッシュ・フロー計算書では、営業・投資・財務の区分を確認します。利益と営業キャッシュ・フローが大きく異なる場合は、売掛金・棚卸資産・買掛金などの増減、税金、現金支出を伴わない費用等をたどり、差の理由を整理します。適用基準や期間による表示・分類の違いにも注意します。[5]

分析メモに残す4項目
  1. 比較対象の会計基準、連結・個別、期間、通貨
  2. 利益に影響する会計方針・見積りと、当期の変更
  3. 重要な損益項目、調整後指標の定義と数値のつながり
  4. 利益と現金収支の差の理由、比較の限界、未確認事項

IFRSの決算・開示資料の作成に関する支援は、IFRS決算・開示・親会社向けレポーティング支援をご覧ください。

根拠資料・確認日

確認日:2026年10月8日。一般的な読み方の整理です。個別企業の適用基準(早期適用を含む)、会計方針及び開示内容によって確認事項は変わります。

研修のご案内

本テーマに関連するアドバイザリー業務や研修も用意してございます。
ご相談等ございましたらお気軽にお問い合わせください。