新リース基準の契約一覧とリース判定メモの作り方

結論:契約一覧は、判断の入口を残す資料

契約一覧には基本情報と判断結果の要約を、リース判定メモには理由・証拠・未確認事項を残します。この記事は、集めた契約を「なぜそう判断したか」まで説明できる記録につなげる方法を扱います。候補段階で契約を削除せず、調査範囲と判断の経緯をたどれるようにします。

契約一覧とリース判定メモを分ける理由

図1一覧・判断メモ・会計方針の役割を分ける
会計方針:会社共通のルール

簡便処理の選択、期間の判断方針などを参照する。

契約一覧基本情報と判断の要約

契約名、月額、期間、資産の種類、候補・判断結果

リース判定メモ判断の過程を記録する

暫定結論、根拠資料、判断理由、未確認事項

共通の管理番号でつなぐ
一覧から、理由と証拠資料をたどれるようにする

実務上の整理例です。必ず別ファイルにする必要はなく、同じ台帳の別シート等で管理する方法もあります。

判断メモは、リース識別・期間・短期や少額の候補などを、どの前提で整理したかを残す内部記録です。すべての契約に長文を書く必要はなく、重要な契約や判断が分かれる論点を中心に整備します。

契約一覧に入れる基本項目

一覧側の基本項目を確認する
区分 項目例 使い道
契約情報 契約名、相手先、契約開始日、契約満了日、自動更新条項 調査対象範囲と契約期間を確認する
支払情報 月額、年額、支払頻度、初期費用、維持管理費用相当額 リース料、少額リース候補、影響額試算の基礎にする
資産情報 資産種類、設置場所、資産番号、特定された資産の有無 リースを含む契約かどうかを検討する
利用条件 専用利用、入替権、使用方法の決定権、使用量制限 使用を支配する権利があるかを検討する
リース期間 解約不能期間、延長オプション、解約オプション、違約金 借手のリース期間を見積もるための材料にする
簡便的取扱い候補 短期リース候補、少額リース候補、300万円基準候補 会計方針や監査法人確認につなげる
管理情報 資料所在、担当部署、確認者、確認日、未確認事項 追加資料依頼とレビュー状況を管理する

契約一覧の基本項目については、既存記事「新リース基準対応、契約一覧はどの項目で作るべきか」でも整理しています。本記事では、その一覧を実際のリース判定メモにどうつなげるかを中心に解説します。

リース判定メモに残すべき項目

図2判断メモは、事実・理由・未確認を分ける
記録例:保守込みの機器利用契約実務上の架空例/最終判定ではありません
1 確認できた事実資料と該当箇所

契約書には機器利用と保守の記載あり。請求書は合計額のみ。

2 検討理由・基準どの定めを確認するか

リース識別を確認し、リース部分とサービス部分の区分・会計方針を検討。

3 暫定結論分かった範囲を明示

リースを含む可能性のある契約として一覧に残す。金額の整理は未了。

4 未確認・次の作業担当と確認資料

契約担当者が見積明細を収集。経理が採用方針と配分の要否を確認。

保守の内訳が分かれば自動的に結論が決まる例ではありません。原則区分と一体処理の選択は、後の「保守料・サービス料込みの契約」で説明します。

判断テーマごとの記録項目を開く
判断テーマ 残す内容
リースを含むか 特定された資産、使用を指図する権利、使用から得られる経済的利益を確認した内容
リース期間 解約不能期間、延長オプション、解約オプション、更新見込み、重要な経済的インセンティブ
短期リース候補 リース開始日における借手のリース期間が12か月以内か、購入オプションを含まないか
少額リース候補 300万円基準の対象になり得るか、同種契約の多寡、事業上の重要性
リース部分と非リース部分 保守、サービス、管理費などが含まれる場合の内訳確認状況
未確定事項 契約書未入手、請求書内訳未確認、監査法人・親会社へ確認予定の事項

表の「更新見込み」は意図だけで判断せず、延長又は解約しないことが合理的に確実かを経済的インセンティブに基づき検討します。初期調査から会計方針の確定・親会社や監査法人への確認まで、記録を更新して使います。

300万円基準は、一覧から除外する理由ではない

300万円以下に見える契約も、少額候補として残し、次の前提を記録します。

  • 契約単位をどう見たか
  • 判定に用いる期間と、その期間に対応するリース料総額をどう見たか
  • 維持管理費用相当額やサービス部分をどう見たか
  • 同種契約が多数ある場合に重要性がないと言えるか
  • 親会社や監査法人に説明する必要があるか

契約金額による方法は、事業内容に照らした重要性も確認します。同種契約の多寡はその判断材料であり、複数契約を合算して300万円と比較するという意味ではありません(適用指針第22項(2)①・第23項・BC43)。

300万円基準そのものの考え方は、既存記事「日本独自の少額リース300万円基準とは」で整理しています。

短期リース・少額リースは別項目で管理する

短期は開始日時点の借手の期間が12か月以内で購入オプションを含まないか、少額は採用した方法の金額・重要性の条件を満たすかを確認します。候補欄は分けて管理します。

短期リース・少額リースの違いについては、既存記事「新リース基準の短期リース・少額リース」も参考になります。

保守料・サービス料込みの契約は、内訳確認状況を残す

機器利用と保守などが一つの契約に含まれるときは、原則としてリース部分と非リース部分を分けて処理します。一方、借手には科目又は性質・用途が類似する原資産グループごとに、関連する非リース部分を合わせて処理する選択もあります(第34号第28~29項)。

  • 契約書上、保守料・サービス料の内訳があるか
  • 請求書や見積書で内訳を確認できるか
  • 内訳が不明な場合、相手先や担当部署に確認したか
  • 会計方針上、どのように扱う予定か

区分する場合の対価配分は適用指針第9~11項で確認します。固定資産税・保険料等の維持管理費用相当額(第13項参照)について、第22項(2)①の少額判定額から合理的見積額を控除できる取扱い(第23項)は、サービス対価の配分とは区別して検討します。内訳不明を理由にサービス部分を一律に除外しないでください。

この整理は、後の会計方針書にもつながります。会計方針書に入れるべき項目は、既存記事「新リース基準の会計方針書には何を書くべきか」で整理しています。

監査法人・親会社に説明しやすいリース判定メモの作り方

図3追加資料を、判断と一覧へ反映する
  1. 起票する

    判断日・判断者・資料・暫定結論・理由を記録する。

  2. 未確認事項を解消する

    不足資料と確認先を決め、親会社・監査法人への確認要否を整理する。

  3. 確認結果を反映する

    検討した結論と理由をメモに追記し、一覧の判断欄も更新する。

  4. 変更時に見直す

    契約変更や追加情報があれば再検討し、以前の判断と変更理由を残す。

実務上の記録手順です。確認結果・変更履歴を残すことで、社内の判断と外部への確認状況を区別できます。

記録する管理項目を開く(8項目)
  • 判断日
  • 判断者
  • 確認資料
  • 暫定判断
  • 判断理由
  • 未確認事項
  • 親会社・監査法人への確認要否
  • 確認結果

Excel台帳で始める場合の注意点

契約件数が少ない場合や、まず影響度を把握する段階では、Excel台帳から始めることも現実的です。

ただし、Excelで進める場合でも、次の点には注意が必要です。

  • 列名と判定ルールを途中で変えすぎない
  • 判断者、判断日、確認資料を残す
  • 契約変更や更新時の更新ルールを決める
  • 親会社・監査法人への提出用に、説明しやすい形に整える
  • 契約件数が多い場合は、システム導入要否も検討する

システム導入や支援サービスを選ぶ前に整理すべき事項は、既存記事「新リース基準対応でシステム・支援サービスを選ぶ前に整理すべきこと」も参考になります。

影響額試算へ進む前に確認すること

契約一覧とリース判定メモがある程度整うと、影響額の概算に進みやすくなります。

ただし、影響額試算に進む前に、次の点を確認しておくと手戻りを減らせます。

  • 主要契約の契約書が入手できているか
  • リース期間の前提が暫定でも整理されているか
  • 短期リース・少額リース候補が分かれているか
  • 保守料やサービス料の内訳確認状況が分かるか
  • 監査法人・親会社に確認すべき論点が一覧化されているか

影響額をまず概算すべき理由は、既存記事「新リース基準、自社への影響額をまず概算すべき理由」で整理しています。

よくある失敗

  • 経理部門が把握している契約だけで一覧を作ってしまう
  • 少額に見える契約を最初から一覧に入れない
  • 月額だけを見て300万円基準を判断してしまう
  • 契約書の保守料・サービス料の内訳を確認しない
  • 判断理由を残さず、結論だけを入力する
  • 親会社・監査法人への確認事項を別管理にしてしまう

よくある質問

Q1. 300万円以下に見える契約は一覧から外してよいですか?

最初から外すのは避けた方が安全です。少額リース候補として一覧に残し、どの前提で判断したかをリース判定メモに残します。

Q2. 契約一覧と会計方針書はどちらを先に作るべきですか?

通常は、契約一覧を先に作り、主要論点を把握したうえで会計方針書又は会計方針メモに落とし込む流れが進めやすいです。ただし、会計方針のたたき台を先に作り、契約一覧を作りながら更新する方法もあります。

Q3. リース判定メモは全契約について必要ですか?

すべての契約について詳細な文章を残す必要はありません。金額が大きい契約、判断が分かれる契約、親会社・監査法人確認が必要な契約を中心に、理由と未確認事項を残すことが重要です。

Q4. Excelで管理しても問題ありませんか?

契約件数が少なく、更新や変更が少ない場合は、Excelから始めることもあります。ただし、複数拠点、複数会社、多数契約、頻繁な契約変更がある場合は、システム導入や既存システム改修の要否も検討します。

Q5. 初回相談で個別契約の最終判定までできますか?

初回相談では、契約件数、資料整備状況、主な契約種類、親会社・監査法人から求められている事項を確認し、次に必要な作業範囲を整理します。個別契約の最終判定や影響額の確定は、契約書等の資料確認後の別途対応になります。

図と本文の根拠(2026年9月28日確認):企業会計基準第34号第25~26項・第28~29項・第31項、企業会計基準適用指針第33号第4項(2)・第5~11項・第13項・第17項・第20項・第22~23項・BC43。一覧・メモの書式、記録項目、更新の流れは実務上の提案です。

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根拠資料

  • 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」
  • 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」
  • 本記事では、契約一覧・リース判定メモの作り方は実務上の整理として記載しています。個別契約の会計処理、税務処理、監査上の判断は、契約書、会計方針、監査法人又は専門家への確認により判断してください。