新リース基準で短期リース・少額リースはどう整理すべきか

短期リース・少額リースは早めに分けておく

新リース基準対応では、すべての契約を同じ深さで確認すると、作業量が大きくなります。

そのため、契約一覧を作る段階で、短期リースや少額リースに該当しそうな契約を早めに分けておくことが重要です。

ただし、短期リース・少額リースは「契約一覧から外してよい契約」という意味ではありません。

まず候補として整理し、会計方針、重要性、監査法人・親会社の確認を踏まえて、最終的な取扱いを決める必要があります。

短期リースとは何か

短期リースとは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(企業会計基準適用指針第33号第4項(2))。

購入オプションとは、借手がリース対象資産を購入できる権利のことです。

短期リースについては、一定の簡便的な取扱いが認められています(企業会計基準適用指針第33号第20項、BC37-BC38)。

実務上は、次のような契約が候補になります。

  • 契約期間が1年以内の事務所、倉庫、短期利用スペース
  • 短期間だけ使う機器や什器のレンタル契約
  • プロジェクト期間だけ使う一時的な設備利用契約

ただし、契約書上は1年以内でも、更新や延長が実質的に前提になっている場合は注意が必要です。

契約書上の期間だけで判断しない

短期リースの判定では、契約書に書かれた期間だけを見ると誤りやすくなります。

新リース基準では、リース期間について、解約不能期間に加え、延長オプションや解約オプションを踏まえて判断する考え方が採られています(企業会計基準第34号第15項、第31項、企業会計基準適用指針第33号第17項)。

例えば、契約書上は1年契約でも、事業上その場所や設備を継続利用することが合理的に見込まれる場合には、単純に短期リース候補として処理できるとは限りません。

リース期間の見積もりについては、以下の記事でも整理しています。

新リース基準で計上額を大きく左右する「リース期間の見積もり」の実務判断ポイント

少額リースとは何か

少額リースについても、一定の簡便的な取扱いが認められています(企業会計基準適用指針第33号第22項、第23項、BC39-BC45)。

この取扱いは、少額なリースまで一律に詳細計算すると、財務諸表への影響に比べて実務負担が大きくなりすぎることを踏まえたものです。

300万円基準については、旧適用指針第16号におけるリース契約1件当たりのリース料総額300万円以下の取扱いを踏襲する考え方が、企業会計基準適用指針第33号BC41-BC43で説明されています。

実務上は、次のような契約が少額リース候補になります。

  • 複合機、PC、タブレットなどの少額な機器リース
  • 什器、備品、少額設備のリース
  • 1件当たりのリース料総額が小さい車両・機器の契約

ただし、少額に見える契約でも、同種契約が多数ある場合や、事業運営上重要な資産である場合は、会計方針上の重要性や全体影響を別途確認する必要があります。

ここでいう全体影響の確認は、リース契約1件当たりのリース料総額300万円以下かどうかという判定単位を変更するものではありません。少額リース候補として整理した契約が、全体として財務諸表や管理実務にどの程度影響するかを確認する趣旨です。

契約一覧で分けるべき項目

短期リース・少額リースを整理するには、契約一覧に候補判定の項目を入れておくことが有効です。

例えば、次の項目を追加します。

  • 短期リース候補か
  • 少額リース候補か
  • 契約開始日
  • 契約終了日
  • 解約不能期間
  • 更新・延長オプションの有無
  • 購入オプションの有無
  • 月額又は年額の支払額
  • リース料総額
  • 同種契約の件数
  • 候補判定の理由
  • 監査法人・親会社への確認状況

契約一覧に入れるべき基本項目については、以下の記事で整理しています。

新リース基準対応、契約一覧はどの項目で作るべきか

最初から除外しない方がよい理由

短期リースや少額リースは、実務負担を下げるために重要な論点です。

一方で、最初から契約一覧に載せない運用にすると、後で次のような問題が起きます。

  • どの契約を確認したのか説明できない
  • 短期・少額の判断根拠が残らない
  • 監査法人や親会社から再調査を求められる
  • 同種契約を集計したときの影響額が分からない
  • 会計方針を決める前に対象外としてしまう

そのため、最初の契約棚卸しでは、対象外として捨てるのではなく、「短期候補」「少額候補」として残しておく方が安全です。

影響額の概算を先に行うべき理由については、以下の記事でも解説しています。

新リース基準、自社への影響額をまず概算すべき理由

ソフト選定前にも整理が必要

短期リース・少額リースの整理は、ソフト選定の前にも重要です。

どの契約を計算対象にするのか、どの契約を簡便的な取扱いの候補にするのかが曖昧なままでは、ソフトに入れるデータ項目や運用フローが決まりません。

また、システムに入れない契約についても、なぜ対象外にしたのかを説明できる形にしておく必要があります。

ソフト導入前に契約一覧とリースの識別を整理すべき理由については、以下の記事で整理しています。

新リース基準対応は、ソフト導入前に契約一覧とリースの識別を整理すべき理由

消費税・税務上の扱いは別途確認する

短期リース・少額リースの会計上の取扱いと、消費税や法人税上の処理は、同じ論点として単純に扱わない方が安全です。

この記事では、会計基準上の短期リース・少額リースの整理に絞っています。

消費税、法人税、税務申告上の取扱いについては、契約内容、請求形態、税務上の整理を踏まえた確認が必要です。

特に税務処理を記事や社内ルールに反映する場合は、国税庁情報、通達、税務顧問・税理士等の確認を別途行うべきです。

まとめ

短期リース・少額リースは、新リース基準対応の実務負担を下げるうえで重要な論点です。

ただし、最初から契約一覧から外すのではなく、候補として分けておき、会計方針や監査法人・親会社確認を踏まえて最終判断することが重要です。

実務上は、次の順番で進めると整理しやすくなります。

  • 契約一覧に短期・少額リース候補の項目を入れる
  • 契約期間、購入オプション、リース料総額、同種契約を確認する
  • 候補判定の理由を残す
  • 会計方針、重要性、監査法人・親会社確認を踏まえて最終判断する

短期リース・少額リースは、作業を減らすための入口ではなく、説明できる形で整理しておくべき実務論点です。


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