新リース基準の短期リース・少額リース|300万円基準と実務整理
本記事は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の適用対象となる会社(上場会社、会社法上の大会社、会計監査人設置会社等)を想定した内容です。原則適用は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から、早期適用は2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から可能とされています(企業会計基準第34号第58項)。
短期リース・少額リースは早めに分けておく
新リース基準対応では、すべての契約を同じ深さで確認すると、作業量が大きくなります。
そのため、契約一覧を作る段階で、短期リースや少額リースに該当しそうな契約を早めに分けておくことが重要です。
ただし、短期リース・少額リースは「契約一覧から外してよい契約」という意味ではありません。
まず候補として整理し、会計方針、重要性、監査法人・親会社の確認を踏まえて、最終的な取扱いを決める必要があります。
短期リースとは何か
短期リースとは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(企業会計基準適用指針第33号第4項(2))。
ここでいうリース開始日は、契約締結日ではなく、借手が原資産を使用する権利を行使できるようになった日を指します。契約日と使用開始日が離れている契約では、どちらの日で判定するかを誤らないよう注意が必要です。
購入オプションとは、借手がリース対象資産を購入できる権利をいいます。短期リースの判定では、購入オプションが契約に含まれているかどうかが問われ、行使する見込みがあるかどうかは考慮しません。契約期間が12か月以内であっても、購入オプションが付されている契約は短期リースには該当しません。
短期リースについては、一定の簡便的な取扱いが認められています(企業会計基準適用指針第33号第20項、BC37-BC38)。
この簡便的な取扱いは、契約ごとに任意で選べるものではありません。対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、又は、性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに、適用するか否かを選択する枠組みとされています。
そのため、契約一覧を作る際には、契約単位の情報だけでなく、その原資産がどの科目・どのグループに属するのかを併せて整理しておく必要があります。
実務上は、次のような契約が候補になります。
- 契約期間が1年以内の事務所、倉庫、短期利用スペース
- 短期間だけ使う機器や什器のレンタル契約
- プロジェクト期間だけ使う一時的な設備利用契約
ただし、契約書上は1年以内でも、更新や延長が実質的に前提になっている場合は注意が必要です。
契約書上の期間だけで判断しない
短期リースの判定では、契約書に書かれた期間だけを見ると誤りやすくなります。
新リース基準では、リース期間について、解約不能期間に加え、延長オプションや解約オプションを踏まえて判断する考え方が採られています(企業会計基準第34号第15項、第31項、企業会計基準適用指針第33号第17項)。
例えば、契約書上は1年契約でも、事業上その場所や設備を継続利用することが合理的に見込まれる場合には、単純に短期リース候補として処理できるとは限りません。
リース期間の見積もりについては、以下の記事でも整理しています。
新リース基準で計上額を大きく左右する「リース期間の見積もり」の実務判断ポイント
少額リースとは何か
少額リースについても、一定の簡便的な取扱いが認められています(企業会計基準適用指針第33号第22項、第23項、BC39-BC45)。
この取扱いは、少額なリースまで一律に詳細計算すると、財務諸表への影響に比べて実務負担が大きくなりすぎることを踏まえたものです。
少額リースとは、次のいずれかに該当するリースをいいます。
(1) 購入時費用処理基準によるもの
重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採用している場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリースをいいます。
(2) 金額基準によるもの
次の①又は②のいずれかを選択します。
- ① 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース
- ② 新品時の原資産の価値が少額であるリース
なお、少額リースに係る金額の算定期間は、原則として借手のリース期間とされますが、契約期間を基礎として算定することも認められています。また、リース料に含まれる維持管理費用相当額について、合理的に見積もった額を控除して算定することができます(企業会計基準適用指針第33号第23項)。
①と②は選択適用であり、いったん選択した方法は首尾一貫して適用する必要があります。
なお、①は契約単位での判定、②は原資産単位での判定である点に注意が必要です。1件のリース契約に複数の原資産が含まれる場合、どちらの基準を採用しているかによって判定の切り口が変わります。
300万円という金額は、現行の適用指針第33号第22項(2)①の本文に定められた固定上限ではありません。旧適用指針第16号の取扱いを踏まえた背景や考え方について、企業会計基準適用指針第33号BC41-BC43で説明されています。
なお、5千米ドルという金額は、企業会計基準適用指針第33号BC41で、国際的な基準開発時に念頭に置かれた資産規模の背景として説明されているものです。現行の第22項(2)②における一律の判定上限額として定められているものではありません。
実務上は、次のような契約が少額リース候補になります。
- 複合機、PC、タブレットなどの少額な機器リース
- 什器、備品、少額設備のリース
- 1件当たりのリース料総額が小さい車両・機器の契約
ここで注意が必要なのは、少額リースの判定が金額のみで決まるものではない点です。上記(2)①は、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースであることと、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいことの両方を求めています。したがって、契約1件当たりの金額が小さくても、その資産が事業運営上中核的な役割を果たしている場合には、少額リースに該当しないと判断される可能性があります。
これとは別に、同種契約が多数ある場合には、集計ベースでの影響額の確認も必要になります。この確認は、契約1件当たりの金額という判定単位を変更するものではありません。少額リース候補として整理した契約が、全体として財務諸表や管理実務にどの程度影響するかを把握する趣旨です。
なお、判定に用いる借手のリース料の範囲は、契約の記載内容だけで一律に決まるものではありません。企業会計基準第34号第19項では、借手のリース料から、非リース構成部分に配分された対価を除くことが基本とされています。企業会計基準適用指針第33号第9項から第11項に従って、リース構成部分と非リース構成部分を区分し、独立販売価格の比率等に基づき対価を配分します。ただし、旧適用指針で維持管理費用相当額等として扱われていたものが、そのまま現行基準でも同じ扱いになるとは限らず、役務提供相当額は非リース構成部分に該当し得ます(適用指針BC14-BC21)。少額リースの金額算定については、第23項に基づき、維持管理費用相当額を合理的に見積もって控除できる場合があります。具体的な範囲は契約内容に応じて確認し、会計方針として整理しておくことが望まれます。
オフバランスにしても注記は残る
短期リース・少額リースの簡便的な取扱いを適用した場合、使用権資産及びリース負債は計上しません。ただし、それで開示上の対応がすべて不要になるわけではありません。
企業会計基準適用指針第33号第100項(1)では、短期リースに係る費用の発生額を注記することとされています。ただし、当該費用を他の費用に含めて表示している場合は、その旨を注記します。なお、少額リースに係る費用や、リース期間が1か月以内の短期リースに係る費用は、短期リースの費用の発生額に含めないことができます。
一方、少額リースについては、企業会計基準適用指針第33号BC146-BC147で説明されているとおり、費用の発生額の注記は求められていません。したがって、短期リースかつ少額リースの双方に該当するリースについても、少額リースとして短期リースの費用の発生額に含めない取扱いが可能です。
実務上のポイントは、注記に必要な金額の集計を、契約一覧の設計段階で織り込んでおく必要があるという点です。オフバランスにするから管理不要と整理してしまうと、注記作成の段階で費用集計をやり直すことになります。
契約一覧で分けるべき項目
短期リース・少額リースを整理するには、契約一覧に候補判定の項目を入れておくことが有効です。
例えば、次の項目を追加します。
- 原資産の科目・グループ区分
- 短期リース候補か
- 少額リース候補か
- 契約開始日
- 契約終了日
- 解約不能期間
- 更新・延長オプションの有無
- 購入オプションの有無
- 月額又は年額の支払額
- リース料総額
- 同種契約の件数
- 候補判定の理由
- 短期リース簡便法を適用した場合の年間費用(注記集計用)
- 短期かつ少額に該当するか
- 監査法人・親会社への確認状況
契約一覧に入れるべき基本項目については、以下の記事で整理しています。
最初から除外しない方がよい理由
短期リースや少額リースは、実務負担を下げるために重要な論点です。
一方で、最初から契約一覧に載せない運用にすると、後で次のような問題が起きます。
- どの契約を確認したのか説明できない
- 短期・少額の判断根拠が残らない
- 監査法人や親会社から再調査を求められる
- 同種契約を集計したときの影響額が分からない
- 会計方針を決める前に対象外としてしまう
また、短期リースの判定は一度で終わるものではありません。当初は12か月以内と見込んでいた契約でも、延長オプションの行使が合理的に確実と判断される事象が生じた場合には、借手のリース期間の見積りが変わり、短期リースとしての取扱いを継続できなくなる可能性があります。
契約一覧に候補として残しておくことは、こうした再判定を行うための土台にもなります。
そのため、最初の契約棚卸しでは、対象外として捨てるのではなく、「短期候補」「少額候補」として残しておく方が安全です。
影響額の概算を先に行うべき理由については、以下の記事でも解説しています。
ソフト選定前にも整理が必要
短期リース・少額リースの整理は、ソフト選定の前にも重要です。
どの契約を計算対象にするのか、どの契約を簡便的な取扱いの候補にするのかが曖昧なままでは、ソフトに入れるデータ項目や運用フローが決まりません。
また、システムに入れない契約についても、なぜ対象外にしたのかを説明できる形にしておく必要があります。
ソフト導入前に契約一覧とリースの識別を整理すべき理由については、以下の記事で整理しています。
新リース基準対応は、ソフト導入前に契約一覧とリースの識別を整理すべき理由
消費税・税務上の扱いは別途確認する
短期リース・少額リースの会計上の取扱いと、消費税や法人税上の処理は、同じ論点として単純に扱わない方が安全です。
この記事では、会計基準上の短期リース・少額リースの整理に絞っています。
消費税、法人税、税務申告上の取扱いについては、契約内容、請求形態、税務上の整理を踏まえた確認が必要です。
特に税務処理を記事や社内ルールに反映する場合は、国税庁情報、通達、税務顧問・税理士等の確認を別途行うべきです。
まとめ
短期リース・少額リースは、新リース基準対応の実務負担を下げるうえで重要な論点です。
ただし、最初から契約一覧から外すのではなく、候補として分けておき、会計方針や監査法人・親会社確認を踏まえて最終判断することが重要です。
実務上は、次の順番で進めると整理しやすくなります。
- 契約一覧に短期・少額リース候補の項目を入れる
- 契約期間、購入オプション、リース料総額、同種契約を確認する
- 候補判定の理由を残す
- 会計方針、重要性、監査法人・親会社確認を踏まえて最終判断する
短期リース・少額リースは、作業を減らすための入口ではなく、説明できる形で整理しておくべき実務論点です。
本記事は、公表されている会計基準等に基づく一般的な解説であり、特定の会社の会計処理を判断するものではありません。個別の契約や事案に係る取扱いについては、監査法人・親会社及び顧問専門家への確認をお願いいたします。
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