給与が2か所以上ある人の確定申告と20万円の判断基準
勤務先が2か所以上あっても、必ず確定申告が必要とは限りません。 確認するのは、勤務先の数だけでなく、年末調整に含まれていない給与の金額や、給与以外の所得です。
会社員の副業、複数の医療機関での勤務、複数社からの役員給与など、国内の給与を受け取る方に向けて、確認する順番を整理します。転職で源泉徴収票が2枚ある場合も、同時に2か所で働いている場合とは分けて考えます。
この記事は2026年の所得についての一般的な説明です。申告が必要な場合、期限は原則として翌2027年3月15日です。還付申告のみの場合や個別の期限延長などは扱いが異なります。国税庁「確定申告」
最初に年末調整の範囲を確認する
- 1源泉徴収票を集めるその年のすべての勤務先分を用意
- 2年末調整の範囲を見るどの給与が含まれるか、前職分の合算も確認
- 3金額と例外を確認20万円基準・給与以外の所得・申告不要の条件など
勤務先の数だけでは判断しません。所得税の申告が不要でも、住民税は別に確認します。
年末調整とは、勤務先が毎月の給与から差し引いた所得税等と、年間の税額との過不足を精算する手続きです。
同時に複数の勤務先で働く場合、主な勤務先以外から受ける給与は、原則として年末調整の対象になりません。本業で年末調整を受けていても、副業先の給与まで精算済みとは限らないためです。国税庁「2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」
まず、手元の資料を次のように分けると確認しやすくなります。
| 働き方 | 最初に確認すること |
|---|---|
| 本業とアルバイトなどを掛け持ち | 年末調整されていない勤務先の給与がいくらあるか |
| 複数社の役員や複数の医療機関で勤務 | すべての給与の源泉徴収票が揃っているか |
| 年の途中で転職 | 前職の給与が転職先の年末調整に含まれているか |
勤務先には「年末調整をしましたか」だけでなく、「どの勤務先の給与まで含めていますか」と確認すると、前職分の漏れや重複を見つけやすくなります。
20万円基準で確認する金額
給与のすべてが源泉徴収の対象となる一般的なケースでは、次の合計額が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。ただし、後述の申告不要となる場合や還付になる場合などは除きます。
年末調整されていない給与の収入金額 + 給与・退職所得以外の所得金額
給与は税金や社会保険料を差し引いた手取り額ではなく、源泉徴収票の「支払金額」などで確認します。給与所得控除を差し引いた金額で20万円と比較するものではありません。また、勤務先ごとに20万円の枠があるわけではありません。
どちらも20万円以下でも、合計は21万円。
金額は手取り額や給与所得控除後の額ではなく、給与収入です。給与・退職所得以外の所得があれば、その所得金額も加えて確認します。
架空の計算例です。還付になる場合や申告不要の条件もあるため、21万円という金額だけでは申告義務は確定しません。
20万円だけでは判断できない場合
年間の給与収入の合計が2,000万円を超える場合は、この20万円以下の申告不要の取扱いは使えません。
一方、給与収入の合計から一定の所得控除※を差し引いた額が150万円以下で、給与・退職所得以外の所得が20万円以下なら、申告不要となる取扱いがあります。
※雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除いた所得控除。
税額を計算すると還付になる場合などもあるため、「合計が20万円を超えた」という情報だけで全員に申告義務があるとは判断しません。
同族会社の役員などで、その会社から給与以外に貸付金の利子や不動産の賃貸料を受け取る場合も、20万円基準だけでは判断できません。源泉徴収義務のない支払者からの給与、海外給与などは別途確認が必要です。国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」
なお、副業が業務委託や物販であれば、給与と同じ計算ではありません。「副業の入金」をすべて給与として集計せず、契約内容や支払資料を確認してください。
転職した人は前職分を二重に数えない
年の途中で転職した場合、一定の前職給与を含めて、転職先で年末調整を行うことがあります。源泉徴収票が2枚あることと、未精算の給与が2か所分あることは同じではありません。
前提:転職先が、前職分を含めて年末調整を済ませている場合
給与収入も、源泉徴収税額も二重に加えない。
摘要欄や勤務先の説明で合算範囲を確認します。含まれていない場合や不明な場合は、両方の資料を確認してください。
前職給与を確認できず年末調整を受けられなかった場合は、資料を揃え、確定申告による精算を確認します。国税庁「中途就職者の年末調整」
申告する場合は給与と控除をまとめて確認する
確定申告では、原則として本業と副業の給与を合わせて年間の税額を計算し、既に源泉徴収された税額と精算します。副業分だけを切り出して申告するものではありません。国税庁「確定申告」
準備の際は、次の一覧を使って不足する資料を確認してください。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| その年のすべての勤務先の源泉徴収票 | 支払金額、源泉徴収税額、年末調整の有無、前職分の合算、訂正版の有無 |
| 控除に関する証明書等 | 年末調整に反映済みのものと、追加するものの区別 |
| ふるさと納税の受領証等 | ワンストップ特例を申請した分を含む、その年の寄附 |
| 住宅ローン控除の資料 | 適用年数、当年の残高、前年からの変更等 |
| 前年の申告書控えがある場合はその控え | 継続する控除や前年との変更点。ただし当年の要件は改めて確認 |
還付申告でも20万円以下の所得を省略しない
医療費控除などのために確定申告をする場合、「20万円以下だから」と給与や他の申告対象所得を外すことはできません。20万円の基準は、一定の場合に申告そのものを不要とする取扱いです。なお、源泉分離課税の預金利息や、別制度で適法に申告不要を選ぶ特定口座の所得等は区別します。国税庁「確定申告を要しない場合の意義」
ふるさと納税のワンストップ特例を申請済みの場合
確定申告を行うと、ワンストップ特例の申請は無効になります。控除を受けるには、申請済み分を含むその年のふるさと納税を、確定申告に反映させます。国税庁「ふるさと納税」
所得税の申告が不要でも住民税は別に確認する
所得税の20万円以下の申告不要の取扱いを、そのまま住民税に当てはめることはできません。ただし、所得税の確定申告をしない人全員に、住民税の申告が必要という意味でもありません。
例えば千代田区では、所得が給与のみで、勤務先から給与支払報告書が提出され、控除の追加・変更がない場合は、住民税の申告は不要と案内しています。複数勤務先の給与が漏れなく報告されているかも含め、お住まいの市区町村の案内で確認してください。千代田区「住民税の申告」
税理士に確定申告を依頼したい方へ
申告書の作成・提出に時間を使いにくい方、複数の源泉徴収票や年末調整の内容を税理士に確認してほしい方は、申告の依頼も選択肢になります。還付になるか、追加納付になるかは、給与・控除・源泉徴収税額を合わせて計算した結果によります。
九段パートナーズ会計事務所では、国内の給与・役員給与を中心とする確定申告を、基本料金55,000円(税込)で承っています。源泉徴収票5枚までなどの条件があり、給与以外の所得や追加の検討・資料整理が必要な場合は個別にお見積りします。
対応範囲・料金・ご依頼の流れはサービスページでご確認いただけます。申告の要否と作業範囲を確認してからご案内します。
根拠確認日:2026年10月5日。国内居住者の給与を中心とした一般的な説明です。個別の申告要否・控除の適用は、対象年の制度と資料により判断します。


