新リース基準、自社への影響額をまず概算すべき理由
いきなり全契約の判定から始めない
新リース基準対応では、最初からすべての契約を詳細に判定しようとすると、作業量が大きくなりすぎることがあります。
まず必要なのは、自社にどの程度の影響がありそうかを概算することです。
影響が大きい会社であれば、早めに契約一覧の整備、リース判定、計算ツール、監査法人・親会社対応まで進める必要があります。
一方で、影響が限定的であれば、優先順位をつけて対応することができます。
新リース基準で何が変わるのか
新リース基準では、借手はリース開始日にリース負債と使用権資産を計上します(企業会計基準第34号第33項、第34項)。
使用権資産とは、借手がリース期間にわたり原資産を使用する権利を表す資産です。
リース負債は、将来支払うリース料を現在価値に割り引いて計算する考え方が基本になります。
そのため、賃貸借契約やリース契約が多い会社では、貸借対照表の資産・負債の金額が大きく変わる可能性があります。
概算で見るべきポイント
影響額を概算するときは、最初から精密な計算をする必要はありません。
まずは次の情報を集めることが重要です。
- 主な賃貸借契約、リース契約、利用契約の件数
- 月額又は年額の支払額
- 契約期間
- 残存期間
- 延長オプション、解約オプションの有無
- 短期リースや少額リースに該当しそうな契約
- 親会社や監査法人から求められている対応水準
リースを含む契約かどうかは、契約締結時に判断する必要があります(企業会計基準適用指針第33号第5項)。
また、リース期間は契約書上の期間だけでなく、延長オプションや解約オプションを踏まえて判断します(企業会計基準第34号第15項、第31項、企業会計基準適用指針第33号第17項)。
概算しないまま進めるリスク
影響額を概算しないまま、いきなりソフト選定や全契約レビューに進むと、次のような問題が起きやすくなります。
- 対応範囲が広がりすぎる
- 重要な契約と軽微な契約の優先順位がつかない
- 監査法人や親会社への説明が後手に回る
- ソフト導入後に必要な契約情報が不足していることが分かる
- 予算や社内工数の見積もりができない
特に、上場会社の子会社や会計監査人設置会社では、親会社・監査法人に対して「どの契約を調査したか」「どの程度の影響が見込まれるか」を説明できる形にしておくことが重要です。
ソフト選定の前に契約一覧とリースの識別を整理すべき理由については、以下の記事でも解説しています。
新リース基準対応は、ソフト導入前に契約一覧とリースの識別を整理すべき理由
短期リース・少額リースも早めに確認する
新リース基準には、短期リースや少額リースについて簡便的な取扱いがあります。
短期リースは、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内で、購入オプションを含まないリースとされています(企業会計基準適用指針第33号第4項(2))。
短期リースの簡便的な取扱いは同適用指針第20項、少額リースの簡便的な取扱いは同適用指針第22項、第23項で整理されています。
ただし、これらは「何でも対象外にできる」という意味ではありません。
契約一覧の段階で候補を分けておき、後で会計方針や監査法人との確認を踏まえて整理する必要があります。
契約一覧に入れるべき項目については、以下の記事で整理しています。
まずは上位契約から見る
実務上は、すべての契約を同じ深さで確認するよりも、金額や重要性の高い契約から確認する方が現実的です。
例えば、次のような契約を先に確認します。
- 本社、店舗、倉庫、工場などの賃貸借契約
- 月額支払額が大きいリース契約
- 契約期間が長い契約
- 延長オプションや解約オプションがある契約
- 親会社報告や監査上の影響が大きい契約
まず上位契約を見れば、自社への影響が大きいのか、限定的なのかを判断しやすくなります。
まとめ
新リース基準対応では、いきなり全契約の判定やソフト選定に進むよりも、まず自社への影響額を概算することが重要です。
概算によって、対応範囲、社内工数、外部支援の要否、監査法人・親会社への説明方針を決めやすくなります。
特に重要なのは、次の3点です。
- 契約一覧を作る前に、主要契約の影響感をつかむ
- リース識別、リース期間、短期・少額リースの論点を早めに把握する
- 本格対応が必要かどうかを早い段階で判断する
新リース基準対応は、早く始めるほど選択肢が増えます。
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