借りているオフィスも「リース」に?新リース会計基準の対象会社で家賃の処理はどう変わる
新リース会計基準を適用する会社では、借りているオフィスも原則として、「オフィスを使う権利」(使用権資産)と「家賃を払う義務」(リース負債)を貸借対照表に計上します。
「リースは機械や車の話」と考えていても、本社や営業所を借りて家賃を払っていれば確認が必要です。
ただし、対応が求められるのは主に上場会社や会計監査人を置く会社などで、それ以外の中小企業はこれまでどおりの処理を続けられる場合があります。まず自社が対象かを確認し、対象であれば賃貸借契約書を集めるところから始めましょう。
いつから対応する?まずは自社の適用を確認
新基準は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度から適用されます。3月決算の会社であれば、通常、2028年3月期が最初の適用年度です。早期適用も認められています。
ただし、すべての会社がオフィスを資産計上するわけではありません。新基準への対応が求められるのは、主に上場会社など金融商品取引法の適用を受ける会社や、会計監査人を置く会社(任意で置く場合を含む)です。これらに当たらない中小企業は、「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」に沿って、これまでどおりの処理を続けられる場合があります。
まず、自社の決算に新基準を適用する必要があるかを確認してください。上場会社などのグループ会社は、自社の決算に使う会計ルールと、親会社の連結決算用に求められる対応の両方を確認してください。
根拠:企業会計基準第34号第58項、「中小企業の会計に関する指針」第4項・「中小企業の会計に関する基本要領」総論2、国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」4頁(補足)。3月決算の適用年度は第58項からの整理、対象会社の目安は中小会計指針・中小会計要領の適用対象からの整理、グループ会社の確認は実務上の推奨です。
「リース契約」ではなく「賃貸借契約」でも対象になる
会計上のリースは、リース会社から機械や車を借りる取引だけを指すものではありません。契約の名称よりも、特定の資産(例:ビルの特定の区画)を一定期間、対価を払って使い、その使用による利益をほぼすべて自社が得て、使い方も自社で決められるかを確認します。
例えば、ビルの特定の区画を借り、自社のオフィスとして使用する一般的な賃貸借契約は、リースに該当することが通常です。契約書に「リース」という言葉がなくても、対象から外れるわけではありません。
一方、自由席を利用するコワーキングスペースなどは、専用区画の有無や運営会社による区画の入替権など、契約内容を確認する必要があります。「オフィス関連の支払い」というだけで、すべて同じ処理にはできません。
根拠:企業会計基準第34号第6項・第25~26項・BC14項、企業会計基準適用指針第33号第5~8項。
資産になるのは「オフィスを使う権利」
借りている建物が、会社の所有物になるわけではありません。計上するのは、契約に基づいてオフィスを使う権利と、その対価を支払う義務です。
| 計上するもの | 意味 |
|---|---|
| 使用権資産 | オフィスを一定期間使う権利 |
| リース負債 | その使用に対して、今後リース料を支払う義務 |
これまで通常の賃貸借処理をしていたオフィスでは、毎月の家賃を費用にする処理が中心でした。新基準では、使用権資産を減価償却し、リース負債について利息相当額を費用にする処理が原則となります。減価償却とは、資産の金額を使用する期間に配分して費用にすることです。毎月の家賃の支払いは、リース負債の返済(元本と利息)として処理します。家賃分の費用がなくなるわけではなく、減価償却費と支払利息という形で計上されます。
会計処理が変わるだけで、契約上の家賃が自動的に増えたり、将来の家賃を一括払いする義務が生じたりするわけではありません。
オフィスが1か所でも、確認する意味がある
契約が1件でも、月々の家賃を数年分まとめると、計算対象となる金額は小さくないことがあります。
例えば、月額家賃50万円、会計上のリース期間5年と仮定すると、単純な支払総額は3,000万円です。これは説明のための架空例であり、3,000万円をそのまま資産・負債に計上するという意味ではありません。
実際の計上額は、原則として将来の支払いを現在の価値に割り引いて計算するため、通常は単純な支払総額より小さくなります。契約条件に応じた調整もあり、使用権資産とリース負債の金額が一致しない場合もあります。また、リース期間を一律に5年とする決まりもありません。
資産と負債が増えると、自己資本比率など、決算書から計算する指標にも影響し得ます。契約件数だけで対応の要否を判断しないことが大切です。
根拠:企業会計基準第34号第31項・第33~34項、企業会計基準適用指針第33号第19項・第40~41項。上記金額・財務指標への説明は、規定を踏まえた架空例と一般的な解説です。
「2年契約」「6か月前に解約可能」でも、その期間だけとは限らない
オフィス賃貸で注意したいのが、計算に使う期間です。
契約書に「契約期間2年」「6か月前の通知で解約可能」と書かれていても、それだけで会計上のリース期間が決まるわけではありません。会計上のリース期間は、自社が解約できない期間を出発点に、①更新(延長)することが合理的に確実な期間と、②解約しないことが合理的に確実な期間を加えて決めます。「合理的に確実」とは可能性が相当程度高いという意味で、「使い続けるつもり」という意図だけでは判断しません。
例えば、次のような事情が判断材料になります。
- 内装や設備に大きな投資をしているか
- 移転すると、移転費用や業務への支障がどの程度生じるか
- その場所が、事業を続けるうえでどの程度重要か
- 更新・解約条件や移転計画がどうなっているか
単に「長く使うつもりだから長期間」「解約できるから短期間」と決めず、判断の理由を残す必要があります。
詳しくは、リース期間の見積もりの実務判断ポイントで説明しています。
根拠:企業会計基準第34号第15項・第31項、企業会計基準適用指針第33号第17項・BC29~BC30項。
最初の準備は、オフィスの契約書をそろえること
自社が新基準に対応する場合、最初に取り組みたいのは、契約内容の把握です。リース会社との契約だけでなく、オフィスの賃貸借契約も確認対象に含めます。
| 集めたい資料・情報 | 確認すること |
|---|---|
| 賃貸借契約書、更新契約書、覚書 | 現在有効な契約条件 |
| 家賃・共益費等の明細 | 支払額とサービス等の内訳 |
| 更新・解約に関する条項 | 更新の条件、解約予告期間、違約金 |
| 内装工事や移転計画に関する情報 | 継続使用を判断する材料 |
すでに借りているオフィスも、移行時の検討対象です。新基準の適用後に新しく借りる物件だけを調べればよい、というわけではありません。移行時の計算方法には経過措置があり、例えば適用初年度の期首時点で残っている支払額をもとにリース負債を計算する方法も認められています。どの方法を採るかを確認します。
短期・少額リースには資産・負債を計上しない選択肢もあります。ただし、短期リースの判定は会計上のリース期間が12か月以内で、購入オプションがないことなどが前提です。月額家賃が低いことや解約予告期間が短いことだけで、例外を使えるとは判断できません。
契約を一覧にする際は、契約一覧とリース判定メモの作り方も参考にしてください。
根拠:企業会計基準適用指針第33号第4項(2)・第20項・第22~23項・第118~124項。資料一覧は実務上の整理案です。
オフィス賃貸の確認から、新リース対応を進めたい方へ
「オフィス以外に大きなリースはない」「契約は少ないが、計算や決算処理まで対応できるか不安」という場合も、まずは契約内容と必要な作業を整理することが出発点になります。
九段パートナーズ会計事務所では、契約整理や会計方針の検討から、計算、仕訳入力、月次運用、初年度決算まで、新リース会計基準への実務対応を一括して支援しています。
※本記事は一般的な説明です。適用の要否、リース期間、例外の利用、計上額は、会社の会計方針や個別の契約条件によって確認が必要です。根拠確認日:2026年9月25日。

